第103回

日本経済の未来 その一
家電機器の歴史

◇お話し:積哲夫 ◇聞き手:何田匡史
二千十九年一月三十日 配信

何田:今回は、二千十九年の世界と日本国、国内外、生活環境、経済など、たくさんのことを積先生にお聞きしたいと思います。

:二千十九年に関してお話をしましょう。二千十九年は日本にとって、正念場の年になるでしょう。ある分野では、世界にとっても正念場の年になるでしょう。

何田:それはどのような形でしょうか?  神様を信じているものと、神様を信じないものとの戦い、でしょうか?

:そうなると思います。まず、二千十九年はきっと中国経済が崩壊をはじめるので、今までの日本の経済のシステムでは成り立ち行かないことが明らかになるでしょう。日本の大企業の時代は、完全に終わります。ということは、日本のサラリーマンも未来がなくなる、ということです。

何田:中小企業の会社やサラリーマンは、まだ残りますか?  中小企業は、ほとんど大企業からお仕事をもらっているので、大企業がなくなるとそれに繋がる中小企業は死活問題です。

:今までの産業構造や、やり方で生きてきた会社はどこも危ないでしょう。

何田:AI(人工知能)が進歩し、人件費の削減で人が要らなくなって、効率化されていきます。会社のシステムや制御のシステムに、AIを使用したソフトやハードを取り入れた会社は生き残るということでしょうか?

:そうだと思います。もはや通信事業の世界ではないと思います。中国のHuawei (ファーウェイ:華為技術)とZTE(ちゅうこうつうじん:中興通訊)が世界から排除されても、日本国からそういう通信会社がもはや出てくる可能性はないのです。はっきりいってありません。それは、日本は技術的にも人材的にも、まず完全に人がいないからです。もう一つ、次の段階の新しい日本の産業を考える人達が出てこないとだめ、なのです。次の時代の日本の産業を支えるような、新しいムーブメントを興す人達の会社がこれから出てくると、考えてください。それは、現在の皆さんが考えているAIとかではきっとないのです。これは、私の予言というか、確言です。
何田:それは全く新しい発想から生まれてくるものでしょうか?

:まったく新しいものでもなく、今、世界に欠けているものだと思います。

何田:今、世界に欠けているもの、ですか? 果たして何が欠けているでしょうか?

:今の世界には、何が欠けていますか? それは私にもわからないのですよ。わからないですが、ただそれはAIの分野ではないでしょう。AIは、GAFA=グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェースブック(Facebook・現在の社名Meta)、アマゾン(Amazon)の四社が先行していて、中国ではHuawei、ZTE他が国策として進めてきました。お金を使いたい放題で、やってきた中国の国営企業はGAFAに比べてある意味で優位だったのです。それが今回のスパイ容疑等で、世界市場からHuawei等は退場させられるでしょう。するとAI分野は、GAFAの独壇場になります。しかしGAFAに関してはヨーロッパでは既に企業活動は法律で規制が入っています。好き勝手はやらさない、個人の情報データは勝手に使用してはいけない、となっています。ビッグデータの時代は、ある意味で終わろうとしています。しかしAIはどんどん進化しています。それが二千十九年年頭の状況です。トヨタがソフトバンクと組んだ最大の理由は、中国が電気自動車にシフトすると決定しているからです。それにヨーロッパも乗っているのです。電気自動車で自動運転になれば、日本の産業の中で、自動車産業の主要な部分はいらなくなっていきます。電気自動車は、エンジンが要らないのです。電気自動車はモータがあって、蓄電池(バッテリー)、コンピュータ、車の走って止まる機能があれば、十分なのです。エンジンのような複雑な機械は必要なくなります。すべての産業はそうなるのです。
ということは、電気屋さんの時代がきます。しかし、もう日本では、部品は別としてAIを作れる電気屋さんが、もはや存在していないのです。パナソニックがどこへ向かおうとしていますか? パナソニックは現在、白物家電(冷蔵庫・洗濯機・乾燥機・炊飯器などの家庭用電気機器)に戻ろうとしています。

何田:白物家電を、東芝はやめました。日立も撤退しようという状況だと思います。パナソニックのCMを見ていると家庭用電気機器を頻繁に流しています。

:パナソニックは家庭用電気機器に、AIを組み込んだ製品を作ろうとしています。これはひとつの方向性です。AIが一般社会に浸透するにはこれしかないのです。人の代わりにAIが、何かをやってくれるということです。

何田:たとえば、給仕ロボットみたいなものでしょうか?

:そうそう。パナソニックの前身の松下電器産業の歴史を見ればわかるのですが、千九百六十四年(昭和三十九年)、日本の電気屋さんが大型コンピュータを開発する段階で、一番最初に大型コンピュータをやめたのは松下電器産業(現パナソニック)でした(小型ノートパソコンは継続して生産発売しています) 。大型のコンピュータの開発はどうしても多額の費用がかかって儲からない、と松下幸之助さんが判断されてやめられました。

何田:パナソニックは、現在ビジネスノートパソコンのレッツノート等を発売されていますが・・・…。

:大型コンピュータを撤退したあと、ソニーがバイオを発売したので、パナソニックもレッツノートを発売したと思います。

何田:松下幸之助さんはなぜ、大型コンピュータ分野をやめられたのでしょうか?

:コンピュータの開発にはものすごくお金がかかったのです。当時のIBMには勝てませんでした。当時はまだ大型コンピュータの時代でした。日本の電気屋さんの発想では、アップル社のような企業は生まれなかったのです。アップル社がコンピュータをつくったから、小さくなって、小さくなって、現在のアイフォンやスマートフォンのように携帯サイズのコンピュータになりました。それは携帯用コンピュータなのです。