お金の問題 4
2023年 3月30日
3月は決算期ということもあって、大型電気製品のお得なキャンペーンも開催されていました。
その中に、お風呂用のガス給湯器のキャンペーンもあり、迷った末に取り換えを決意したのです。ガス給湯器は我が家では3台目になります。これまでに使用していた機種は、お風呂の自動給湯システムが壊れていたので、いちいち湯量を確認して蛇口を締めていました。それでも給湯能力自体はあったので、動かなくなっていないのに給湯器を買い替えることに多少の後ろめたさと、もったいなさを感じていたのですが、世界経済の激変の予感から、壊れてからでは半導体の供給率の関係で、すぐに買い替えることが不可能かもしれないと思い切って買い換えたのです。実際に、前年は半導体の関係で製品自体がなくて、購入を希望していた多くの顧客に待ってもらったと工事に来た関係者から聞きました。費用は、設置工事費込みで約34万円でした。
3代目のガス給湯器に買い換えてから、10数年前の2代目のガス給湯器に買い替える少し前に、機械の調子が悪くなったのを確認するたびに、気分が落ち込んで不安になったことを思い出しました。その時期は、子供の教育費が二人分かかっていたピーク時で、貯蓄も少なく、まとまった出費が発生するかもしれないことに恐怖を感じていたのでした。
ご家庭によっては、電気製品は古くなる前に早めに買い替えるところもありますが、我が家では白物家電製品は壊れたら買い替えるという方針で、これまで暮らしてきたのです。これが正しいのかどうかは別にして、親からの引き継いだ経済感覚は「倹約して質素に暮らす」という方向性でした。しかし、私の場合は、親のお金が不足することに対する恐怖を、マイナス感情として引き継いでいることから、子供時代からいささか行き過ぎた倹約を強いられて、逆にお金を使うことへの恐怖と、感情的にお金を使うことができない(お金を使うことは悪)という弊害が出てきていました。それは、確かに私の癖となっていたのですが、子供時代から刷り込まれた考えと方向性であり、親が正しいと思っている価値観でした。親であっても他人の思惑を強制されるのは、非常に居心地が悪くて、視野を狭めます。縛りのきつい苦しさから、当たり前のように考えていたお金へ認識を、いままでやれなかったお金を使うという行為によって、その呪縛を自分自身で解いていったのです。
本当に食べたいと思ったものは、お金を払って食べるし、使いたいと思った製品は、経験として購入します。人を応援したいと思ったら、無理のない範囲で寄付をしていくというように、これまでとは違うお金の支払い方をすることで、「こうしなくてはならない」と思い込まされていたお金への姿勢がなくなってきたのです。おかげで、ずいぶんと心が軽くなりましたし、お金についてお勉強することによって、お金への不安が激減しました。
ところで、お金への考え方は、個々人によって全く違います。私もそうでしたが、ほとんどの人は「お金は欲しいけれども、お金のことについてきちんと考えたことがない」というのが実情のようです。この国では、お金のことは家族といえども気軽に話し合うことはありませんし、若い時から自分の収入(生涯賃金)と将来の展望なんて考えることは珍しいことでしょう。これもそれも、教育の中に、正面からお金に向き合って考察する科目が全くないことにもよるのでしょう。
数年前のことになりますが、遠縁の葬儀に出かけて行って、遠方のホテルに泊まっていた時のこと。大浴場の露天風呂でいると、私と同じような年回りの方が入ってこられました。その方と二人だけだったというのもあったのでしょうが、いきなり話しかけられて、その内容が「年金を60歳からと、早めに受給しているのだけど、これは得なのか損なのか、あなたはどう思うのか」という質問と相談でした。
その方が早めの受給に踏み切ったのは、知人のご主人が税務関係の仕事についており、妻である知人が早期受給を選択したので自分もそのようにした、とのことでした。質問者の方のご主人はすでに年金を受給されていて、ご夫婦で約35万円(月額)の受給額になると聞き、夫婦での年金受給額としては平均を大きく上回る金額でした。ご自分でもいろいろと調べて納得して早期受給を選んだのでしょうが、それでも、「もしかしてこの選択は間違いだったのではないのか。結果的には損をしているのではないのか。損しているのなら悔しい」という不安から、露天風呂で出会った見ず知らずの私に年金やお金の相談をして、その回答を参考にしようとしたみたいなのです。
やっぱり、お金や財産の具体的な話は、利害関係の対立もあり、身近な人にはできにくいですね……。
お金という物質には感情が付いてくるので、ちょっとした発言や行動が、後々までも恨まれたり妬まれたりすることに繋がることもあるのです。
日戸 乃子