お金の問題 3
2023年3月23日
人間の人生のテーマの一つに、「お金のこと」があると思っています。
ですから今起こっている、海外の銀行倒産のニュースによって、人間の無意識領域にある恐怖が増幅されますし、その現象はこれからますます大きく膨らんでくることでしょう。なぜ、お金が人生のテーマの一つに入るのでしょうか? それは、この現代社会では、お金がないとライフラインを支えることができずに、お金がないという現象は個人の死へと直結することもありえるからです。ですから、人間は「お金がない」という現象を極端に恐れ、不安に感じますし、また他の人がお金を持っていると羨ましく感じることを通り越して、憎むほどにもなるのです。これらは大なり小なり、今の資本主義社会を生きる地球上の人間のほとんどがとらわれているもののようです。
このお金に対しての感情をきちんと理解して、解析しておかないと、自分の内側にあるお金への恐怖にあおられ、エネルギーの層でいうとかなり低い分野にとらわれるようになり、人をうらやむという領域から抜けられなくなります。
私の場合は、この「お金が大事!」という現代資本主義から得た人類共通の価値観のほかに、育ててくれた親の代からすでにお金不足に対する恐怖がありました。兄弟が多い中で育ち、第二次世界大戦という戦争による食糧難と物資不足を体験した親世代には、強烈な「貧乏(不足)に対する恐れ」があり、兄弟の多さから親からの支援は受けられないという環境もあって、節約と貯蓄を美徳とした生活を送ってきましたが、それらのモチベーションを支えたのは恐怖の感情であったために、いくら貯蓄が上乗せされていったからといっても「これだけ貯蓄があれば安心」という感覚には至らなかったようです。
親が持つ金銭感覚(貯蓄主義の清貧)と、お金が不足することへの恐怖は、生活を共にして親からしつけを施される過程で、子供たちに長年にわたって刷り込まれていきます。親にとっては「(未来の恐怖を払しょくするために)お金を貯蓄するのは当たり前」の基本方針なので、もちろん子供にもそれらの姿勢を強要します。子供が、自分たちと違う浪費的な生活方針を採用した場合、その余波を被ることによって、将来的に自分たちの生活を脅かされるかもしれないという打算的な部分もありますが、それよりも内側からせりあがってくる「お金がないことは死に直結する」という思いから、「お金を使うことは悪だ」という凝り固まった価値観を信じ込んでいるからです。
戦争の記憶が遠のいて、物資の豊かな社会になり、右肩上がりの収入の増加によって、この貯蓄至上主義も減少したように見えます。その後、経済の停滞したデフレの三十年間があり、心の奥深くに植え付けられている『お金に対する恐怖』は、さらなる段階に進み、他人への嫉妬としてその姿を現すようになりました。または、経済的に脆弱な立ち位置の自分に絶望して、意識的にこの世界の破滅を望むという方向へ誘導されていきます。
このように、無意識に自分の人生に過大な影響を与えるお金への意識をリセットするためには、お金について自覚していないフィルターがかかっていることを知り、それを理解して、かけられている呪縛を外していくように自分の中の価値観を変えていくしかないのです。これは一度で終わることではなく、何回も何回も、気が付いた時点で訂正していくことで、また刷り込まれた歪みを自覚していくことで、是正されていくものなのです。
お金に関しては、貯蓄主義(不足の恐怖からお金が減ることに苦痛を覚える)もそうですが、浪費主義(お金が手元にあるとつかってしまう。または借金してでも消費を優先することがやめられない)も、実は同じコインの表と裏であり、お金に対する心理的なバイアスがかかっているために、それらの行動がやめられないのです。
お金に対するバイアスを取り除くためには、何が自分の行動を主導しているのかを可視化できなければなりません。
これまで、日本の社会では公に「お金について語ること」は、タブー領域でした。お金に関しての知識も、小中高では習いませんし、家庭でも親にきちんとしたノウハウがないというのもありましたが、お金やお金儲けを題材に討論することは下品なこととしてさげすむ傾向にあったのです。
それは、奥ゆさしいというよりも、戦後から長い間続いた社会構造が、終身雇用や年功序列であった結果の安定があり、競争力を前面に出さなくてもよかったという面があります。一億総中流。一度は、多くの国民がそんな幻想を抱いたし、そう思ってきたのですが、それらのナイーブさは外国の資本至上主義の前にはなすすべもなく、奪われ続けて、この国は貧しさへの道をたどってきました。そして多くの人が、経済も精神性的にも貧しくなったこの国を体感した時に浮かび上がってきたのが、持てる者への嫉妬であり怨嗟の感情だったのです。いま、地上は人間が出す闇のエネルギーに覆われています。これらのマイナスな感情は、自覚なく生み出されている部分もあります。しかし、なぜその感情が自分の中に巣くっているのかを自覚し反省することで、内なる闇の排出を抑えるとともに、何に恐怖を抱いていたのかということが明らかになり、無自覚に影響を受けることが少なくなります。
次回からは、私がこれまでに体験した身近な具体的な例を入れながら、お金が人の中でどのような動き(影響)をしているのかを観ていきましょう。
日戸 乃子(ひと のこ)