Macky:今日はまたテーマを変えて。Steveの希望でArtの話をしようと思います。
Steve:よろしくね。さて、今日は楽しい楽しいArtの話だ。ところで僕はZENをやっていたのは知ってるよね?
Macky:Steveが青年時代、アメリカで禅僧に師事してた?のはこの前なにかのコラムで読んだかなぁ。なに、マザーボード持って「悟った!」ってそのお坊さんの玄関先で叫んだって聞いたんだけど。
Steve:だいぶ偏った知識だけど、間違ってはいないかな(笑)
Macky:禅的な視点も踏まえると、日本の美学と西洋の美学ってだいぶ系統が違うけど、今回はその話もきっと入ってくるよね? さっきからずっと、綺麗な日本の秋の庭園みたいなイメージが見える。
補足:川瀬巴水「赤目千手の瀧」(1951)。私が受けたイメージはまさにこの絵で、彼の心の原風景のひとつのよう。この回の対談を書くにあたって改めて調べるまで、私はこの絵のことは知らなかったのです。
Steve:僕は本当に日本のArtisticなところが大好きでね。美しい景色はいつもPixarでも取り入れるようにしたんだ。だから、きっとPixarが関わった作品は、日本の原風景的な美しさが随所に隠れているはずだよ。
(とはいえPixar作品をそんなに見たことがなくて、いまいちピンとこない私なのでした。ごめんね!!)
Steve:僕は美というのは一種の瞑想のようなもので、研ぎ澄まされた感覚の、very very sensible!(※本当にスマートで機能的)な閃きの先にあるものだと思っている。それはある種、神との交感に近いものだと僕は思っているよ。君の脳の働きって、たぶんそれにものすごく近いんだよ。
Macky:私の? うーん、言われてみればそんな気もするかな…。いつも何かクリエイティブなことを考える時は、こう、ふんわりとした雲の中から、シャープに言葉やイメージの輪郭を削り出すような気持ちになる。
Steve:だろう? 日本人が持ち合わせているこの瞑想的な、very drastic! (※突き詰めた、徹底的)な感覚。きっぱりとした、後に何も残さない精神。僕はこのスマートさと後腐れのなさに痺れたんだ! だからiPhoneを作る時も、日本的なスマートさを取り入れて作ろうと思った。そのためには、Appleの皆にはZENになって貰う必要があった。突き詰めた先にしか答えがないなら、突き詰めさせればいいと思ったんだ。だから僕はあんなにも皆に限界を求めたんだよ。その状態で引き出される答えこそが、僕にとって理想に近いものだったからさ!
Macky:なるほど、一理ある…。そして筋は通っている…。だから日本でiPhoneは人気になったのかもしれないね。
Steve:シンプル、明快、そして機能的。大胆に、繊細に。美しく、鮮やかに。日本人の色彩感覚は素晴らしいと思った。あれほど沈んだ色と赤い色の対比を美しく、儚く表すことができる民族を僕は他に知らない。
Steve:日本人が僕の作ったiPhoneを好きになったのは、きっと日本人が常日頃から、僕の感性を共有して生きてくれていたからだ。僕は本当にこの精神が好きだった。生きることを常に美しく考えるその気高さが好きだった。だから、僕の人生には常に日本の精神が作り出した美の結晶が宿っていたといえるんだ。
Macky:と、なると。日本で爆発的にヒットするものの背景には、きっとそういう精神的な側面が隠れているのかもしれないね。少し古いけど、「アナと雪の女王」(2014年3月公開)とか。
Steve:あれはいい映画だったよね。
Macky:待って、Steveその頃にはもう死んでない?(笑)※Steveの没年は2011年
Steve:僕はこの世界に来て驚いたのは、なんでもフォローできることさ。いい経験だったよ、死んでからも新しいことが学べるなんて知らなかったからね!
Steve:アナと雪の女王は「孤独」の描き方が本当に日本的だったと思う。ありのままと訳されたのは言い得て妙で、でも一方でこう言い表すべきだとも思うんだ。「ありのまま」=「真の姿」。ZENだよ、ZEN。
Macky:好きだね、ZEN!! でも確かに、物事の本質を捉えるっていうのはZENだね。(あ、ZEN呼びが移った…)